【Dorico】Tipsその86:曲頭で音部記号を変更する
9月に入っても厳しい暑さが続いていますが、みなさまお変わりなくお過ごしでしょうか。
楽譜出版現場を支えてきたFinale日本語版のサポート終了から、2026年8月25日で早くも丸1年が経過しました。
やはりというべきか、最近ではDoricoで作成された楽譜も市場に出るようになってきました。そしてFinaleとともに国内のデファクトスタンダードとして親しまれてきた弊社製品Chaconneの後継フォントであるChaconne Exも、そうした楽譜でご活用いただいております。
そこで今回は、一般ユーザーから浄書家までご活用いただけるDoricoのTipsをお届けします。
譜表
- バイオリンはト音譜表(高音部譜表)

- ビオラはアルト譜表

- チェロはヘ音譜表(低音部譜表、バス譜表)

- ピアノはト音譜表とへ音譜表を結び合わせた大譜表

というように、用いられる譜表の種類は楽器によって決まっていますが、音域によっては異なる音部記号を用いることもあります。

(リスト作曲:《パガニーニ大練習曲》より〈練習曲 第3番:ラ・カンパネラ〉)
曲頭で異なる音部記号を用いる場合、譜表本来の音部記号を書いてから必要な音部記号を配置することがしばしばあります。
最初に休符があれば、ただ音符の手前に音部記号を入力するだけなので問題ありません。

しかし休符のデュレーション(音価)が短い場合や、休符がない場合は一番最初に音部記号の変更を挿入することもあります。


(ショパン作曲:《スケルツォ ロ短調》作品20)
このような書き方は廃れたという見方もあり1、Doricoは(FinaleやSibeliusもですが)これをサポートしていません。
一方で一定の支持もあり2、とくに浄書家の方はこの書き方を求められるかもしれませんので、これを入力するテクニックをご紹介します!
キューの場合
じつは、キュー(ガイド音符)の場合は自動的に表記されます。

(ショパン作曲:《ピアノ協奏曲》ヘ短調 作品21 第1楽章)
キューについては「Tipsその83:キュー(ガイド音符)の基本」をご覧ください。
非表示の装飾音符を使う
まずは1拍目に適当な装飾音符を1つ入力します:

ピッチ(音高)やデュレーション(音価)は何でもOK。
続いて1拍目に変更後の音部記号を入力します:

Doricoでは曲頭に限らず、装飾音符を選択して音部記号を入力すると意図しない表記になることがあります。装飾音符ではなく1拍目のアイテム(今回は8分休符)を選択するか、キャレットを1拍目に合わせると正常に入力できます。
意図しない挙動?
ただし、今回のテクニックではこの状態のまま進めても不都合はないようです。
次に音部記号を選択して右クリックメニュー→音部記号→「装飾音符の後」をクリックします。

すると、音部記号が装飾音符の後ろ移動します。

ここで浄書モードに移動し、装飾音符を選択、プロパティパネル→音符と休符→「符尾を非表示」「符頭を非表示」を(必要があれば「加線を非表示」も)それぞれオンにします。

これでほぼ完成ですね!

あとは必要に応じて、「音符のスペーシング」で位置を調節します。

ハンドルは[Alt(Windows)/Option(macOS)]+[←][→]キーで動かすことができます。
非表示の装飾音符については、再生(プレイバック)に影響を与えないよう、プロパティパネル→一般→「再生を抑制」をオンにしておくとよいでしょう。

おわりに
今回はDoricoの裏技ともいえるテクニックをご紹介しました。Sibeliusなどほかのソフトにも応用できるかもしれませんね!
じつは本連載の第1回「Tipsその1(リピート括弧をまたぐタイ)」でも、非表示の装飾音符を使ったテクニックを取り上げました。装飾音符、ポテンシャルありそうです。
今後も一般的な操作方法から裏技的なテクニックまでを解説してまいりますので、お楽しみに!
注
- Elaine Gouldは「The practice […] is obsolete.」と述べている(『Behind Bars: The Definitive Guide to Music Notation』,Faber Music,2011年,7頁)。
- 青島広志は「本当は始めに[ト音譜表とヘ音譜表を結んだ]正しい大譜表を、その後に小さく別の音部記号を書き足すのです。」と述べている(『究極の楽典(新装版)』,全音楽譜出版社,2019年,22〜23頁)。黒川圭一はこれを「古典的な書法」としている(星出尚志編著ほか『Finale User’s Bible 25/26/27』,音楽之友社,2022年,48頁)。



