【Chaconne Ex】美しい楽譜を書こう! その4(音符スペーシング基本編)
前回まではDoricoの基本的な使い方やフォント「Chaconne Ex」の活用方法を紹介してきました。
Doricoには楽譜出版社や浄書家の監修のもと開発されたという自動浄書エンジンが搭載されているので、ユーザーは記譜モードで楽譜を入力することにさえ集中すれば、あとはDoricoが自動的に見た目を美しく整えてくれます。さらに浄書モードを使えば、個々の記号の位置や形、音符の水平間隔、譜表どうしの垂直間隔などを細部までとことん調整することもできるのです。
今回は、そんなDoricoの強力な浄書機能をフルに活用し、美しい楽譜を書くためのポイントを解説します!
浄書モードは極力使わない!?
浄書モードを使えば外観を細かく手動調整といいましたが、ちょっと待ってください!
Doricoには豊富な記譜オプションや浄書オプションが用意されています。(どちらもメニューバーの「ライブラリー」にあります。)
デフォルトで思いどおりの表記にならない場合、まずは記譜・浄書オプションの設定で実現できないか試してみてください。それでも希望の表記にならないときだけ浄書モードで個別に手動調整することをオススメします。
そうすることで、個別調整の手間が省けるのはもちろん、レイアウトが変わったときなど何かの拍子に手動調整がご破算になった、というトラブルを防げますよ!
音符のスペーシング
音符を横に並べるとき、4分音符より2分音符は広く、全音符はより広く……というように、音価(=音の長さ)に基づいて間隔を取るというのはみなさんご存じだと思います。

音価が大きいほどスペースが広いですね。
では、2分音符は4分音符の2倍の長さだから間隔も2倍になるのかというと、じつはそうでもありません。
もし音価が2倍になればスペースも2倍という等比の関係にしてしまうと……

全音符のような長い音符は間延びし、16分音符のような短い音符はぶつかってしまいます。
そこで出版楽譜では、このあたりのバランスを考慮した比率で音符が配置(スペーシング)されているのです!
Doricoをはじめとした楽譜作成ソフトは自動的にスペーシングしてくれるのでふだん気に掛けることもないと思いますが、次の2つを比べてみてください。

Doricoのデフォルト設定でChaconne Exを使用

Finale(日本語版デフォルトファイル)でChaconne Exを使用
DoricoとFinaleで、なんだか異なる印象を受けませんか?
というのも、音価が2倍になったとき、そのスペースをDoricoでは1.41倍するのに対し、Finaleでは約1.62倍するという違いがあるためです。
ちなみにDoricoの1:√2は白銀比、Finaleの1:φは黄金比と呼ばれ、どちらも歴史的に美しいとされさまざまな場面で用いられてきた比ですね!
※√2≒1.41,φ=(1+√5)/2≒1.62
つまりDoricoよりもFinaleのほうが等比のスペーシングにより近いのです。
これはどちらが優れているというわけではなく、ジャズやポピュラー音楽ではFinaleのような等比に近いスペーシングが好まれる傾向があるようですね。
音符スペーシング比を変える
Doricoでスペーシング比を変えるには、メニューバーの「ライブラリー」から「レイアウトオプション」を開き、「音符のスペーシング」カテゴリーを選択します。

なんだか難しそうですがご安心を!
この「カスタムのスペーシング比」が、先ほどご説明したとおりデフォルトでは「1.41」になっていますね。
これをFinaleと同じ「1.62」にすると……

Doricoでスペーシング比を「1.62」に設定。

Finale
Finaleそっくりになりましたね!
ポピュラー音楽の場合はスペーシング比を1.62かそれ以上に設定しておくと、見やすい楽譜になると思います。
おわりに
今回は(今回も?)少々マニアックな話になってしまいましたが、とりあえずスペーシング比を1.62に変更しておくだけでも、これまで見慣れたFinaleの楽譜に近くなるのでオススメですよ♪
「スペーシングなんてどうだっていいよ!(笑)」という方も、だまされたと思ってお試しを。
次回もDoricoならではの機能を活用して美しい楽譜を書くためのコツをご紹介しますよ! それではまた!