【Chaconne Ex】美しい楽譜を書こう! その5(音符スペーシング発展編)
前回は音符スペーシングの基本と、Doricoでスペーシング比を変えることで見慣れたFinaleの楽譜に近づける方法をご紹介しました。
今回も、Doricoの機能を活用して美しい楽譜を書くためのポイントを引き続き解説します!
日本語の歌詞を美しく
デフォルト設定では、日本語の歌詞があるところだけ必要以上に音符間隔が開いてしまいます。

なんだか間延びしていますね。
どうしてこんなことになるかは、英語などアルファベットを使う言語を見れば一目瞭然です。

英語にはスペースが必要ですよね。
そういうわけで、デフォルトでは隣り合う歌詞の間に間隔が空く設定になっているのです。
もちろん英語などでは問題ないのですが、日本語(ほか中国語、韓国語など)ではスペースは必要ないどころかバランスが悪くなってしまいます。
この歌詞どうしの間隔は変更することができるので、歌詞に日本語しか使わない場合は思い切って0にしてしまいましょう!

メニューバーの「ライブラリー」から「浄書オプション」を開き、「歌詞」→「スペーシング」→「隣り合う歌詞の最小間隔」の値を調整します。0スペースか、フォントにもよっては-1/2スペースぐらいでもよいでしょう。

間延びせず、美しくなりました!
ただしこの状態で英語を入力すると……

あちら立てればこちらが立たぬ
ということで、日本語と英語が混在する場合は手動調整が必要になってしまいます。
ここで、日本語と英語が混在する場合の手動調整を最小限にするワザをご紹介します!

デフォルト状態。音符間隔が崩れてしまっています。
さきほどの「隣り合う歌詞の最小間隔」はデフォルトのまま1スペースにしておきます。(フォントによっては0.5スペースぐらいでも十分でしょう。)
次に、歌詞をスペーシングの対象から外してしまいます。(きっとFinaleでもそうしていた方が多いのでは?)

メニューバーの「ライブラリー」から「レイアウトオプション」を開き、「音符のスペーシング」→「歌詞用のスペースを作成」のチェックを外す。
英語はぶつかってしまいますが、日本語は16分音符のように細かい音符が並び、かつ1音符に2つ以上の文字が入るような場合でないとぶつかることはまれです。
さきほどの「音符のスペーシング」は楽譜の途中で変更することができるので、英語が使われている箇所だけ「歌詞用のスペースを作成」をオンにすればよいのです!
浄書モードで最初の音符を選択し、メニューバーの「浄書」メニューから「音符のスペーシングを変更…」を開きます。

一番下のトグルボタンをオンにし、「変更」を選択、「歌詞用のスペースを作成」のチェックを入れます。

「音符のスペーシングの変更点」というガイドが表示されます。
続いて、日本語の箇所は「歌詞用のスペースを作成」をオフにします。
3拍目の最初の音符を選択し、先ほど同様「音符のスペーシングを変更」を開きます。

こんどは「歌詞用のスペースを作成」をオフに「変更」します。(なお初期状態に戻す「リセット」を選択しても同じ結果が得られます)
これで、英語にだけ必要なスペースが入りましたね! あとは、もし日本語の歌詞がぶつかってしまった箇所があれば、そこだけ浄書モードで調整すればよいので楽ちんです♪
ガイドが邪魔な場合は、「Doricoの基礎 その3」を参考に表示・非表示を適宜切り替えましょう。
「譜表間の連桁のスペーシングを最適化」
譜表をまたぐ連桁(れんこう)でつながった音符のスペーシングにはコツが必要です。

ドビュッシー『子どもの領分』第4曲『雪は踊っている』より
これは原則どおり音符を等間隔に並べているのですが、符幹(ぼう)が互い違いになっているために整って見えません。
こういうときは符幹どうしを等間隔にすると美しく見えるのですが、Doricoにはこれを自動で最適化してくれる機能が搭載されているのです!

「レイアウトオプション」の「音符のスペーシング」にある「譜表間の連桁のスペーシングの最適化」をチェック。
すると……

先ほどの譜面よりも美しく見えるのではないでしょうか?
では、こんなに素晴らしい機能がなぜデフォルトでオフになっているのでしょうか。さきほどの歌詞のスペーシングでもあちら立てればこちらが立たぬといいましたが、場合によってはかえって読みにくくなる場合もあるのであえてオフにしてあるのかもしれませんね。
譜表をまたぐ連桁がある楽譜を作成するときは、ぜひこの「譜表間の連桁のスペーシングの最適化」をお試しください!
譜表をまたぐ連桁でなくても、符頭どうしが向かい合っているところの間隔は狭く、符幹どうしが向かい合っているところの間隔は広く取ることでバランスが整って見えます。
文字のタイポグラフィーの世界でも「A」と「V」が並んだら間隔を詰める処理をカーニングといいますが、これと似た技法ですね!
おわりに
ここまでは音符間隔(スペーシング)に着目して、美しい楽譜を書くためのコツを解説してきました。
次回からは、「こんな表記ってどうやって入力するの?」という疑問を解決するTipsを数回にわたって紹介していく予定です。ぜひご期待ください!